食べ物の5つの『薬味』

 漢方医学では、食物にはそれぞれ

●甘味
●酸味
●苦味
●塩味
●辛味

の5つに分けられます。


 「薬味」は、人体の【十二経脈】(体内の気と血の流れをコントロールし、人体の健康のバランスをつかさどる)と密接な関係にあり、影響を与えます。

「薬味」は、それぞれ十二経脈のどこに作用するか決まっています。例えるなら「薬味」は「鍵」、「経脈」は「鍵穴」の関係です。

偏食などして特定の「薬味」を多く摂ったりすると、一部の経脈は満たされるものの、ほかの経脈に足りない部分が出て体内のバランスが崩れ、病気になると考えられています。

それではそれぞれの薬味の特徴に目を向けてみましょう。

【甘味】

 
甘味食物には、内臓の緊張を和らげる作用があり、滋養、解毒、食欲増進、唾液や体液の分泌を促す効果があります。
また、甘味食物は、炭水化物の量が多く、エネルギーとなって体を支える役割があります。さらに、甘味食物には、一部の金属類の毒物に対する解毒などの効果もあるんです。
 ただし、甘味食物を摂りすぎると、肥満や心血管疾患、糖尿病を誘発する原因になる恐れがあります。

・甘味の例
干しシイタケ、長芋、ナツメ、クコの実、黒豆、白きくらげ、はちみつ、サツマイモ、イチジク、マッシュルーム、インゲン、フジ豆、みかん、ほうれん草、キャベツ、マンゴー、じゃがいも、人参、すっぽん、キュウリ、ゆり根、川エビ、ハスの実、くるみ、冬瓜、銀杏、白菜、アンズ、柿、落花生、イシモチ、サクランボ、など。(意外なものもありますね)


【酸味】

 
酸味食物には、内臓を引き締める作用があり、寝汗、軟便や下痢、おりもの、出血、咳、食欲不振などの症状を改善する効果が期待できます。
 これは、酸味食物が胃酸の分泌を促進して、胃腸の消化機能を増強し、消化道の病原菌の繁殖を抑制したり感染を防止する効果を持っているためでもあります。
 さらに、止血、女性の月経まつわる症状や男性ホルモンなどに対してもいい効果があるんです。
 酸っぱいものはいいこと尽くしですが、摂りすぎると消化機能の乱れにつながってしまいます。

・酸味の例
キウイ、サンザシ、梅、とまと、黒酢など。(基本的にすっぱいものです)


【苦味】


 苦味食物には臓器などを丈夫にする作用があり、筋骨を強くし、脾臓や腎臓を滋養して、体内の悪い熱、便秘、胸のむかつき、腹の張り、消化不良などを改善できます。
 苦味食物には、マグネシウムやカルシウムなどの物質が多く含まれていて、それらの物質は消炎、消化、排せつを促進して、骨の密度を増加させるなどの効果があります。
 
 ただし、摂りすぎは、排せつが頻繁になりすぎて、体内のミネラルやビタミンの損失につながります。コーヒーがいい例ですね。

・苦味の例
茶葉、苦瓜、グリーンアスパラガス、ケツメイシ、ゴボウ、かぶ、あんずなど。(杏仁豆腐もこちらに入ります)


【塩味】


 体内の有害な硬い物質を溶かす作用があり、結核によってできた両性の腫瘍、甲状腺腫などを治療、あるいは緩和し、腎臓の不足した栄養を補い、たんを消すなどの効果があります。
 また、塩味食物にはカリウム、ナトリウム、ヨウ素などの物質が多く含まれ、これらの物質は甲状腺の機能不足を治したり、増殖した組織を消したり体内の酸性とアルカリ性のバランスを維持したり、腎臓の機能を促進します。

 ただし、塩味書物を摂りすぎると、水分の排出が多くなり、血液がドロドロになってしまい、循環が悪くなって高血圧になってしまいます。

・塩味の例
カキ、アワビ、昆布、のり、わかめ、さめ、ナマコ、タチウオ、海エビなど。(海水を含んでいるので塩味に分類されます)


【辛味】


 辛味食物には発散作用があり、体内の寒気を取り除いたり、血行を良くしたり、体内の「気」の流れや動きを助けたりする効果があります。
 これは、辛味に属している食べ物に多く含まれている揮発性の成分の力によるものです。この成分は殺菌作用を持つことが特徴で、粘膜や皮膚を刺激して、体温と血圧を高くするなどの効果があります。

 また、冷え性、風邪、リウマチなどにいい効果もあります。ただし、摂りすぎは痔や目の病気にかかりやすく、出血にもつながりますので気を付けてくださいね。

・辛味の例
ニンニク、ショウガ、ねぎ、唐辛子、大根、ニラ、ピーマン、玉ねぎ、山椒、八角など。(生ものにショウガやネギが添えられているのは殺菌効果があるためと言われているからです)


 これをみて、実際の味と違うと感じられた方もいることと思いますが、「薬味」の分け方はあくまで漢方医学上における分類ですので必ずしも一致しないということを覚えておいてくださいね♪

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